本気の恋を、教えてやるよ。
そろそろ終わりそう?って声を掛けるだけ。
きっと、別に何も無い。
いつものように、俺の心配し過ぎに決まってる。
──だけど。
「……何、やってんだよ」
そんな俺の期待は、最悪の形で裏切られた。
少し動いただけで触れてしまいそうな唇。
稲葉の腰と後頭部に回された手。
会議室に居た二人の距離は、どう考えてもただの同僚のそれでは無かった。
は?こいつ、何してんの?
つか、稲葉に何しようとした──……?
「……なあ、答えろよ。何しようとしてた?」
ゆらり、筒井の方に向かう。
筒井は、何を考えてんだか分かんないような顔で、じっと静かに俺を見つめていた。
なあ、もっと焦るとかねーの?
なんでそんなに落ち着いてられんの。
「何やってんだって訊いてんだよ!」
その澄ました態度にカッとなり怒鳴った俺は、筒井の胸倉を掴みあげる。