本気の恋を、教えてやるよ。



そろそろ終わりそう?って声を掛けるだけ。


きっと、別に何も無い。

いつものように、俺の心配し過ぎに決まってる。


──だけど。


「……何、やってんだよ」


そんな俺の期待は、最悪の形で裏切られた。


少し動いただけで触れてしまいそうな唇。

稲葉の腰と後頭部に回された手。


会議室に居た二人の距離は、どう考えてもただの同僚のそれでは無かった。


は?こいつ、何してんの?

つか、稲葉に何しようとした──……?


「……なあ、答えろよ。何しようとしてた?」


ゆらり、筒井の方に向かう。


筒井は、何を考えてんだか分かんないような顔で、じっと静かに俺を見つめていた。


なあ、もっと焦るとかねーの?

なんでそんなに落ち着いてられんの。


「何やってんだって訊いてんだよ!」


その澄ました態度にカッとなり怒鳴った俺は、筒井の胸倉を掴みあげる。



< 315 / 392 >

この作品をシェア

pagetop