本気の恋を、教えてやるよ。
それで済む。
なのに。
稲葉は戸惑ったように、気まずそうに目を逸らすだけで。
「……なんで、否定しないの」
なんか言ってよ。
そんな沈黙、やめろよ。
「まさか、本当にキスしようとしてた?」
すると、びくっと稲葉の体が震えて。
それが、何よりの答えで。
「慶太、には」
そして彼女は。
「私が居ないと、駄目だから」
──いつかの日のようなセリフを、繰り返した。
慶太には私だけなの。
私が居ないと、慶太は。
「は、なに、稲葉……」
もう、吹っ切れたと思ってたのに。
稲葉を呪縛から解いてあげれたと、思ってたのに。
「まだ、そいつに依存してんの……?」
「依存なんて、そんな」
「じゃあ他に何があるわけ。俺のこと、嫌いになった?」
あんなに言ったのに。
稲葉のその筒井への気持ちは、愛じゃないよって。
アンタらの関係はおかしいだろ、って。