本気の恋を、教えてやるよ。
それに納得してくれたから、俺と付き合おうとしてくれたんじゃないの?
「嫌いとか、そんなんじゃないよ……!」
「じゃあ何なんだよ!」
なんで筒井から離れないの。
なんで、そっちに居るんだよ……。
「駒澤、くん……」
「……俺と、別れたいの?」
稲葉がそんな泣きそうな顔してんのは、俺のせい?
俺がそんなに辛そうな顔、させてんの?
──邪魔者は、俺なのかよ。
「……だんまりかよ」
ふ、と歪んだ唇から漏れ出たのは嘲笑で。
やるせなさが、体中を巡る。
「駒澤くん、私……っ!」
「──悪いけど、ちょっと一人にさせて」
俺は、強くないから。
その先を聞くのが怖くて、そう言い捨ててその場から逃げた。
早足で廊下を歩き、階段を上り、自分の席へと向かう。
駒澤くん、と呼ぶ声が暫く後ろから聞こえてきたけど、それもやがて聞こえなくなり──。
稲葉と筒井が抱き合っている残像だけが、頭の中に残った。