本気の恋を、教えてやるよ。



元々遊園地自体はどうでもよくて、稲葉が居るならと参加を決めただけなので、今となっては楽しめるわけも無く。


ちらり、辺りの集団を見るが稲葉の姿は無い。


……そして、無意識に稲葉を探してしまう自分が憎い。


てっきり筒井と一緒だろうと思ったのに、筒井は別の男と話していた。


妻夫木の姿も見えないし、稲葉はどこ行ったんだろ……。


「なに、誰か探してんの?」

「いや……」


壱人に曖昧な返事を返しながら、どうしても気になってしまいキョロキョロと視線を巡らす。


自慢じゃないけど、稲葉を見つけられなかったことなんて一度も無い。


いつも、すぐに稲葉の姿を目に捉えてしまう。

……きっとそれは、俺が稲葉を好きで、無意識のうちに追いかけてるから。


そんなことをぼんやり思いながら稲葉の姿を探していると、不意に裾をくい、と引かれ。


「なんだよ壱人、しつけーな……」



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