本気の恋を、教えてやるよ。



「……筒井と付き合うってこと?」

「付き合うとか、そういうのはまだ……」

「俺より、筒井を選ぶの?」


そう言うと、稲葉の顔が悲しげに、苦しそうに歪んだ。


その泣きそうな表情に、泣きたいのはこっちだと一人ごちる。


「どっちも、大事だよ。大事だけど……慶太には、私しか居ないから」

「俺には他の奴がいるって言いたいわけ」


筒井がアンタを望んだら、アンタは簡単に俺の手を離すのに。


俺がどんなに望んでも、アンタは手に入らない。


「私、最低だから……駒澤くんの隣にいる資格はない」


知ってる。

俺のこと散々振り回して、こんなに好きにさせといて、期待させて。


なのに結局元鞘に戻るとか、ふざけんなって話だ。


「駒澤くんには私なんかじゃなくて……もっと、一途で、駒澤くんを大事にしてくれる女の子が良いと思う」


──だけど、そんな風に決めつけられんのは、もっとふざけんなって話だ。



< 324 / 392 >

この作品をシェア

pagetop