本気の恋を、教えてやるよ。
痛みはあるけど、涙は出ない。
浮気とか、誘惑とか。
「そんなんじゃないのに……」
そんな風に疑われてしまうなんて、新田さんにも申し訳ない。
なんで慶太はそんなに疑心暗鬼になるんだろう。私は、慶太しか見てないのに。
その時、凭れていたドアがコンコンコン、とノックされ、私は慌てて立ち上がった。
「は、はい!」
もしかしてここ、誰か予約してた?
すると聞こえてきたのは、落ち着いた低い声。
「……稲葉?」
「えっと、は、はい」
だけど声だけだと誰かわからず、戸惑いながら返事をすると、ゆっくりとドアが開けられた。
そしてそこに見えた人物に、目を丸くする。
向こうも私を見て目を丸くしたかと思うと──私の頬を見て、眉を顰めた。
「こ、駒澤くん」
「……ちょっと、ここで待ってて」
「えっ、あ、でも」
「いいから」