本気の恋を、教えてやるよ。
戸惑ってわたわたと言葉を繋ごうとすると涼やかな目で睨まれ、それ以上何も言えなくなってしまう。
大人しくなった私を見ると、彼──駒澤くんは、また扉を閉めてどこかへ行ってしまった。
変なとこを見られてしまった……と彼の驚いた顔を思い出す。
駒澤楽斗(こまざわらくと)くん。
彼も同期で……でも、会社がそれなりに大きいから同期も沢山いて、彼はSE部門で職種も全然違うせいで、ほとんど喋ったことがない。
だけど、有名だから名前は知っていた。
一度も染めたことがなさそうな艶のある黒髪に、少し気だるげな綺麗な二重の瞳。それを縁どる、長い睫毛。
いつも引き結ばれてる薄い唇は皮一つめくれていなくて、その唇でキスされたーい、なんてどっかの誰かが言ってた気がする。
そんな彼は背も高く、入社した時から女の子たちに大人気だった。