本気の恋を、教えてやるよ。



「そういうつもりじゃ無かったんだけど、俺も結構戸惑っててさ」

「うん……」

「……だって二人とも、すごい幸せそうだったから」


ぽつり、放たれた言葉が鋭く刺さる。


確かに、夢のように幸せだった。──駒澤くんも、同じように思っててくれてたんだとしたら。


「楽斗、最近沈んでるんだ」


その幸せを、駒澤くんの幸せを壊してしまったのは、私?


「こんなこと、部外者の俺に言われたくないかもしれないけど……あんま、楽斗のこと傷つけないでやって」

「……っ、」

「稲葉さんはさ、楽斗がどれだけ稲葉さんのことを好きで仕方なかったのか……分かってないんだ」


ふ、と息を零すように最後に小さく笑んだ佐川くんは、「怒ってるわけじゃないから、ごめんね」と謝って、背中を向けた。


取り残された私は、今更思い至る。


──もしかしてもう、駒澤くんは話してもくれないんじゃないか、と。



< 341 / 392 >

この作品をシェア

pagetop