本気の恋を、教えてやるよ。

#2.ありがとな




「茉莉、こんな所にいたの?給湯室にマグカップ置きっぱだからどうしたのかと……え、泣いてるの?」


様子を見に来てくれた梓ちゃんにそう言われるまで、私は頬を伝う暖かい雫に気が付くことが出来なかった。


佐川くんにああ言われて、やっと分かった。


……駒澤くんのことを、取り返しがつかないほど傷つけてしまったということを、今になって。


「茉莉?」

「梓ちゃん、どうしよう……っ」


私、馬鹿だ。


心のどこかで、許してもらえると思ってたんだ。


駒澤くんなら、私がどんな選択をしても、「仕方ないな」って、「稲葉が決めた事なら応援するよ」って。


いつも優しくて、私の全てを受け入れてくれていたから。その優しさに私は甘えきっていて。


──駒澤くんなら、何をしても許してくれるだなんて、酷い勘違いを。


馬鹿だ。本当に馬鹿。救いようもない。


許してくれるだなんて、どの口が言うの?

人の好意を、何だと思ってるんだ。




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