本気の恋を、教えてやるよ。



でも、私は。


「……私は、二人とも、大切だよ」


誰にどう詰られようと、そう答える。


私の返答に梓ちゃんは目を丸くし──それから、呆れたように笑った。


「なんでそこだけはキッパリしてんのよ」


あと答えになってないからね、それ。と子どもを叱るように私の額を小突く梓ちゃん。


「……ほんとね、自分が嫌になる」


どっちも大切で。


だけど私は慶太の手を取って。

きっとそれがもう、答えなのに。


『慶太の方が大切』──私は導き出されるその答えを、どうしても認めたくなかった。





「今日、俺の家泊まってく?」


慶太が突然そんなことを言い出したのは、六月も残り数日となったとある金曜日の夜。


驚いて目を丸くする私に、慶太は柔らかく微笑んだ。


「明日休みだし。家でゆっくり飲み直せるよ」

「え、っと……」


どう答えればいいかわからず戸惑うと、すぐに慶太の視線が逸らされ、代わりに指先を絡められる。



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