本気の恋を、教えてやるよ。



「腹減ったなー。今日、前に茉莉が行きたがってた居酒屋にしたよ」


そしてそのまま話を逸らされてしまい、私は少しホッとしながら彼の話題に乗っかった。


「今日は俺が奢ってあげる」

「え、いいの?」

「いいよ、好きなの頼みな」


掘りごたつの個室に案内され、メニューを見ていると慶太がそう言って、お酒も好きなの頼んでいいよと日本酒のメニューを見せてくれる。


じゃあお言葉に甘えて、と少し高めの大吟醸と多めに料理を頼む。


楽しみだなあ、次は何頼もう。とメニューを見ながらわくわくしていると、不意に慶太が口を開いた。


「──さっきの、本気だから」

「え?」


何のこと?と首を傾げれば、慶太はじっと、どこか熱の孕んだ視線で私を見つめて。


「今日、俺の家に泊まりなよ」


甘さの滲んだ真剣な声で、そう言った。


その視線に、その声に。何も言えないでいる私の手を、慶太がそっと取り握る。




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