本気の恋を、教えてやるよ。



そして、甘えるように、誘惑するように、少しだけ首を傾げた。


「……家、来なよ」


断る理由なんて無い。

慶太の家になんか、何度も行っているし。


抵抗なんて、無い筈なのに──。


なかなか出てこない「うん」という返事の代わりに、私はただ頷くことしか出来なかった。


それからの事は、あまり覚えてない。


折角楽しみにしてたお酒もお料理も、ほとんど味が分からなくなってしまった。


気が付けばもう慶太の家で。


久しぶりに入った慶太の部屋は、変わらないままで。

──ただ、私を見つめる慶太の瞳だけが、熱い。


背中にはシーツの波。


手は慶太の熱を持ったそれによって、ベッドに縫い付けられていて。


「茉莉……」


囁くような切ない声と共に降ってきたのはキスの嵐。


おでこから鼻の頭。唇、首筋。


啄むような優しい口付けが、私を包み込むけど。


「……緊張、してる?」




< 349 / 392 >

この作品をシェア

pagetop