本気の恋を、教えてやるよ。



「俺はもう大丈夫。だから、今度こそ本当に、離れよう」


それは、二度目の別れの言葉。


でも、あの冬の日のような痛みも苦しみも無くて、あるのは少しの切なさと──安堵。


……まさか、ホッとしてるの?私


「本当は気づいてるんだろ、自分が誰を好きなのか」

「っ、」

「俺とキスしてた時、誰を思い出してた?」


それも、気付かれてたなんて。


「茉莉は優しいから、俺への同情を恋と勘違いしちゃったんだな。あと、使命感も強いし」


はは、と困り顔で笑う慶太。


同情じゃない。そんなことない。そう、言えなかった。


慶太が求めるから、慶太の傍に居なきゃ。


ボロボロの慶太を見て感じた気持ちには確かに、憐情も含まれていたから。


「慶太……」

「あほ、泣くなよ」


いつの間にか溢れ出した塩辛い粒を、慶太は苦く笑いながら拭っていく。


触れた人差し指が、温かい。




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