本気の恋を、教えてやるよ。
──そう、思ったのに。
「おい壱人テメェどういうつもりだ」
「何のことだかボクにはさっぱり」
「ほざけ。知ってたろ?アイツらが来ること」
合宿先に向かうバスの中で壱人を問い詰めると、壱人はヘラヘラと笑った。
「いいじゃんいいじゃん、女の子がいた方が華があってさ」
良くねーーーよ!
ちら、と前の方の座席に目を遣れば、妻夫木と楽しそうに話す稲葉の姿が目に入り、否応なしに心臓が早足になり始める。
朝来た時は本当に驚いた。
まさか、こんな強硬手段に出るとは……。
「さすがにここまでされたら逃げられないな」
確実に一枚噛んでるであろう男が、ニコニコ顔で俺の肩に手を置く。
……こいつ、どっちの味方なんだよ。
でも壱人の言う通り、もう話しかけられたら腹を括るしか無さそうだ。
──そう、覚悟を決めたのに。
「……なあ壱人」
「なに?」
「俺思うんだけど、稲葉は純粋にマネージャーがやりたかったんじゃないの」
「……はは」