本気の恋を、教えてやるよ。
苦笑いすれども否定しないのは、壱人も少なからずそう思っているからだろうか。
合宿に参加した稲葉は、驚くほど働き者だった。
……ほんと、俺になんか目もくれずに働いている。
結局話したのは、「駒澤くんこれタオルとドリンクね!」なんて事務的な声掛けのみで、それに返事をする暇もなく、一日が終わった。
……って、これじゃまるで俺が稲葉に話しかけてもらえるのを期待してたみたいじゃんか。
「……アホか」
散々逃げといて、いざこちらを向かれなかったら気になるなんて、単純すぎる。
「拗ねんなよ楽斗」
「拗ねてねーよ!」
何故か哀れみの目を向けてきた壱人を睨みつけ、布団を頭から被る。
ああもう、モヤモヤする!
こんな合宿、さっさと終われ!
朝、まだ日が昇りきっていない薄暗い外の世界にジャージ姿で繰り出す。
他の奴らはみんな爆睡中で、俺は軽く辺りをジョギングしながら去年の夏を思い返した。