本気の恋を、教えてやるよ。



筒井の話題なんか出したくなかったのに、わざと口にした俺の言葉を強く遮った稲葉。


思わずその強さに驚けば、稲葉は泣きそうな顔で俺を見上げていた。


涙をこらえるような、何かを願うような、何かを耐えるような、そんな表情に胸が痛む。


なんで、そんな顔すんの。


「私、慶太とは付き合ってない」


なんで、そんなこと言うの。


「私は」


なあ、なんで。



「駒澤くんのことが、好き」


今更、そんなこと伝えてくるの。


「……なに、言ってんの」


ふざけてんの?からかってる?

……ああ、わかった。稲葉のことだから、友達として好きってやつか。だから友達に戻りたいとか言うわけ?


「俺と友達になりたいわけ?戻りたいの?」

「違う!そういう好きじゃなくて、本当に、私は……!」


稲葉はそこまで言うと、パッと目を逸らして。


「……ごめんね」


そう呟くと、稲葉の細い腕が俺の胸ぐらを掴み、引き寄せ。



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