本気の恋を、教えてやるよ。
──ぶつかるように、柔い唇が触れた。
「な……」
それは、一瞬で。
だけど、触れたところが燃えるように熱い。
「慶太には、その気持ちは同情だって言われたの。……私、それを否定できなくて」
最低だよね。と自嘲するように口端を歪める稲葉。
「慶太と居ても、考えるのは駒澤くんのことばかりで、駒澤くんのことが頭から離れなくて……」
ほろり、稲葉の大きな瞳から雫が落ちた。
「好き」
そして透明なその声が、俺の鼓膜を震わす。
「好きなの……駒澤くんが、好き」
「……っ、」
「都合がいいって分かってる。駒澤くんがもう、私を嫌いなことも。でもこれだけは、伝えたくて……」
段々と水を含んで震えた声になっていく稲葉を、そのまま強く抱き締めた。
馬鹿。本当にバカ。
嫌いとか、そんなん。
「……嫌いになんて、なるわけ無いだろ……っ!」