本気の恋を、教えてやるよ。



本当はなりたかったよ。

アンタのこと、嫌いになれればこんなに苦しくも無かったのに。


都合が良くたっていい。

振り回されるのには、もう慣れた。


だから、


「俺だって気持ち、変わんない。……アンタのこと──茉莉のこと、好きだよ」


また、俺の元に帰ってきて。


「駒澤くん……っ…」

「……名前で、呼んで」


とうとうしゃくりあげ、次から次へと宝石のような涙を生み出す目尻にキスを落としながら、懇願するように囁く。


「……っ、楽斗……!」


ずっと、聞きたかった。

ずっと、その声で呼んで欲しかった。


いとしい声で紡がれた名前の甘さに、身体中が熱くなる。


「……楽斗、私なんかで、いいの……?」


馬鹿だな。


「俺、言ったろ」


本当の愛を知らなかったアンタに、俺は。



「本気の恋を、教えてやるよ。」







END




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