本気の恋を、教えてやるよ。
彼が軽く投げていたスマホを両手でキャッチし、今度こそ部屋を出る。
足早にマンションから抜け出し、後に残るのはほんのちょっぴりの喪失感。
辛いとか、苦しいとか、そういう感情はいつの間にか麻痺していて、感じなくなってしまっていた。
携帯忘れて、残業して、彼氏の家に寄ったら浮気の真っ最中。散々すぎでは……?と自分のことながら笑えてくる。
駅へと向かう最中、スマホを見ると友人の妻夫木梓(つまぶきあずさ)ちゃんからいくつかのメッセージが通知されていた。
『茉莉、家ついた?』
『携帯取り返せたの?』
『終わったら連絡してよ。絶対!』
十分おきくらいに入っていた通知の数々に小さく笑う。
梓ちゃんは、私と彼の他のカップルとは違った関係を知っている。だからこそ、今日、私が彼の部屋に行くことを、ずーっと心配してくれていた。
返信をしようとメッセージアプリを開き、ふと思い立って受話器マークをタップする。