本気の恋を、教えてやるよ。
……ビビらせたか?と不安になりながら彼女と視線を合わせると、彼女はぱちりと目を瞬いたあとで、ありがとう、と受け取った。
その時、指先が触れ合い、ビクッと跳ねてしまいそうになるのを根性で押し込める。
彼女は氷水を頬に押し当てると、その冷たさにほっと力を弛め、目を閉じた。
良かった、とこちらも安堵するのと同時、そんな無防備な表情にすら心臓が不規則に鳴るから困る。
いつまでも突っ立ってるのもな……。
そう考え、彼女──稲葉茉莉の隣に倣うように座ったがすぐに後悔した。
思ったよりも近いところに座ってしまったせいで、甘い香りが濃くなって、息遣いまで感じられてしまいそうだったから。
そもそも、まともに話したこともないのにいきなり密室に二人きりはハードルが高い。