本気の恋を、教えてやるよ。
それから、頬の腫れについて色々と聞いてみたが稲葉には誤魔化されてしまった。
正直腑に落ちなかったが、あまりしつこくして嫌われたら困る。
別れ際、「本当にありがとう、駒澤くん。……優しいんだね」と言われ、多分変な顔になってしまったと思う。
優しいのはアンタにだけ。
アンタが好きだから優しくすんだよ──なんて、言えたらどんなにいいか。
俺が、稲葉のことを好きになったのは入社してすぐ、四月のことだった。
──四月。
「楽斗ーーーっ!」
ドタバタと騒がしい音を立てて後ろから抱き着いてきたのは、佐川壱人(さがわいちと)。
小・中学の同級生で、この会社に入ってまさかの再会を果たした。
テンションが高すぎてうざい時もあるが、基本的に良い奴だ。
「今日昼飯何食う?」
「わかったから落ち着け」