本気の恋を、教えてやるよ。



一目惚れとかほんとに存在すんのかよ、と小馬鹿にしてた俺の考えを一瞬で覆した衝撃的な出来事。


……きっと、あっちは俺とぶつかった事なんて覚えてもないだろうけど。


稲葉は動揺してロクな受け答えもできなかった俺に怪我が無いのを見てとると、そのまま横をすり抜けてこちらを振り向きもせず、去っていってしまった。


それから、稲葉とは接点もなく日々が過ぎていき。


配属先が本社で稲葉と一緒だった時には思わず小さくガッツポーズをしたが、でもやっぱり話しかけることも出来ず日々は過ぎていった。


そして、告白はおろか相手に存在を認知されているかすら怪しい状態で、失恋確定を知ってしまったのはその年の冬。


珍しく仕事が早く終わり、ちょっとウキウキで会社を出たところで──筒井と稲葉が並んで帰ってる姿を見つけた。


もちろん、早く帰れたことによる嬉しさなんてものは消失し、むしろイレギュラーな自分の退社時間を恨んだ。



< 46 / 392 >

この作品をシェア

pagetop