本気の恋を、教えてやるよ。
手を繋いでたとか、キスをしてたとか、何か確定的なことが二人の間にあったわけではない。
ただ偶然会って、駅まで一緒に帰る流れになっただけかもしれない。
でも、その時のお互いがお互いを見る目は、明らかにただの同期に向けるそれではなくて……。
俺は直感的に、ああ、こいつ稲葉の彼氏なんだろうな、と気付いた。
それが確定的になったのは、その数ヶ月後のこと。
誰が言い出したのか、たまには本社にいる奴らだけでも同期飲みしようぜ、とどこからともなく声が上がり。
正直気乗りしなかったが、まあ初回くらい、と同じく本社に配属された壱人に誘われたのもあり参加した。
そこには稲葉と筒井も居て、思いがけずドキッとする。
でも、稲葉と筒井は席も離れていたし、俺も別に近くなく、話すことも無く飲み会は終わった。
二次会行く人ー、なんて声がかかるのを聞きながら、酔いを覚ますように居酒屋を出た時。