本気の恋を、教えてやるよ。
ふと、前の集団に稲葉の姿が見えないな、と思い、何気なく後ろを振り向いて──後悔した。
数メートル離れた先、稲葉と筒井は手を繋いで、恥ずかしがる稲葉に筒井は笑い、彼女の顔を覗き込むように顔を傾けると──、
俺はそれ以上見てられず、引き止める壱人の言葉も無視して一人家に帰った。
バクバクと心臓が煩くて、嫌な吐き気を伴った。
稲葉に彼氏がいることなんて、気づいていたのに。覚悟、してたのに。
それでも、こんなに胸が引き裂かれるような思いをするなんて。
あーあ、失恋確定かよ。
……いや、それは分かってたことだけど。
でも心のどこかで、俺の勘違いだったらいいのに、と思っていたのも事実で。
現実はそんなに甘くねえよな……。
どうやら俺は女ウケする容姿らしく、よく告白された。でも、誰にも心惹かれなくて、俺はいつも断ってた。
断って、悲しそうな顔をされるのも嫌で、もう告白とかしてこないで欲しい、とうんざりしてたくらい。