本気の恋を、教えてやるよ。
珍しい。
慶太が変わってしまってからは、彼は行為が終わるとさっさと服を着て、いつもスマホを弄ってこちらになんか目もくれなかったから。
こんな風に抱き寄せてくるなんて、まるで恋人みたい。……いや、恋人なんだけども。
「慶太?」
「……動けないの?茉莉」
耳元で甘く訊かれ、こくりと頷く。
動けなくしたのは慶太なんだよ?という恨みも含め、ちょっと慶太を睨んでみる。
だけど慶太は、そんな私の瞼にひとつキスを落として、ぎゅ、と更に抱き締める力を強めた。
「そのまま、動けなくなればいい」
「……それじゃ、どこにも行けないよ」
「それでいいよ。ずっと、ここに居て」
なんでそんな恋人みたいな台詞、言うの?“ここに居て”なんて──。
やだな、誤解してしまいそうだ。
前みたいに、優しい慶太に戻ったんじゃないのか、なんて。