本気の恋を、教えてやるよ。
クラクラする程の口説き文句に、どう返せばいいのかわからず言葉を失ってしまう。
その間にも慶太は私の首筋に、胸元に、顔を埋めては吸い付き、チクリと赤い独占欲の花を咲かせた。
まるで、私を繋ぎ止める鎖のようだ。
……名前も覚えていないなんて、可哀想だよ。立木さんはあんなに慶太を想っているのに。
でもそんなこと、言えなかった。
言ってしまえばさすがに、慶太が凍てつくような眼差しで怒るだろうと分かってたから。
私はもう少し、つかの間の優しい慶太を感じていたかった。
翌日、お昼になった瞬間、隣に梓ちゃんが仁王立ちで立った。
わあ。怒ってる。
「お、お疲れ様、梓ちゃん」
「お疲れ。早く準備して」
「あっ、ハイ」
有無を言わさないような梓ちゃんの声にコクコクと頷き、急いでスマホと財布を手に取る。
そのまま、梓ちゃんに連れられて近くの定食屋さんにやって来た。ワンコインで食べれるお手ごろさが人気のお店だ。