本気の恋を、教えてやるよ。
もう、麻痺していた。
苦しいとか辛いとか、そういった感情をもう感じなくなってしまった。自分で、断絶してしまったから。
だって感じるだけ無意味なのだ。
全ての感情を素直に受け止めていたら、身が持たないことは分かりきっていた。梓ちゃんの言う通り、私はきっと壊れてしまう。
だったら何も感じる必要は無い。それが一番楽だから。
慶太が傍にいろと言うから。
慶太が別れるなと言うから。
慶太が浮気を許せと言うから。
だから私は従う。慶太に逆らっても、勝てっこないんだから。
梓ちゃんはじっと私を見つめていたけど、やがて諦めたように目を伏せて、悲しげに私から手を離す。
「……ねえ茉莉。本当は茉莉、筒井と別れたくないんじゃないの?」
恐る恐るといったように、掠れた声でそう訊いてきた梓ちゃんに、小さく自嘲した。
「そうなの、かも」
慶太から離れられないのは、私の方なのかもしれない。