本気の恋を、教えてやるよ。







午後はトラブルもなく業務が進み、今日は早めに帰れそうかな?と嬉しくなる。


三時過ぎ、少し休憩を挟もうとマイマグカップを持ち給湯室に向かうと、その途中で「稲葉さん!」と声を掛けられた。


振り向くと、あまり話したことがない総務部の男の先輩が立っている。


微笑んでいるが、どこか強ばった表情だ。


「はい……?」


なんだろう、と首をかしげ歩み寄ると、向こうも小走りで駆け寄ってくる。


「急に呼び止めてごめん。休憩?」

「はい」


そっか、と呟いた彼は何故かその場で視線をうろつかせ、なにか言いたそうに口元をまごつかせている。


……なんだろう?


「あの、何かありましたか?」

「えっ」


何かあったから呼び止めたのだろう。そう思い尋ねると、大袈裟に反応された。


それから、どこかこちらを窺うような目が恐る恐るといったように私を見下ろす。


「休憩中にこんなこと頼むのも忍びないんだけど……」



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