本気の恋を、教えてやるよ。
「はい」
「あの、ちゃんとお礼はするので……」
「……はあ」
話の脈絡が見えない。
首を傾げながらもとりあえず返事をしていると、総務部の彼は、意を決したように視線を上げ、とある部屋を指さした。
「ちょっと、お手伝いとかしてくれたりしない?」
彼の指さす先には資料室。
見上げると、彼は困ったように微笑んだ。
「本当は他部署の子に頼むような事じゃないんだけど、丁度通りかかったのを見ちゃったから声かけちゃって……そんなに時間は取らせないので、駄目かな?」
なるほど。総務部の業務は多岐にわたる。
なにか資料整理をしていて、人手が足りなくなってしまったのかな?と思った。
まあすぐに終わるなら、と頷く。
「はい、大丈夫ですよ。マグカップだけ給湯室に置いてきてもいいですか?」
そう言うと、彼の顔がぱあっと明るくなった。
そんなに大変だったのだろうか。