本気の恋を、教えてやるよ。



「あ、あれは不可抗力で──」

「つか、何ノコノコ着いてってんの?人気のない所に二人きりで、何が起こるか予想つかなかった?……ああ、それとも、期待してたんだ?」

「違う……!」

「違くねーだろ!?」


パシン!と小気味よい音ともに、鋭い痛みが頬に走る。


痛みで生理的な涙が溢れそうになるのを、どうにか堪えた。


「告白なんかされてんじゃねえぞ」


慶太は最後に感情の抜け落ちた顔で吐き捨て、部屋を出ていった。


私はソファに横たわったまま、細く息を吐いて腕で目を覆う。


……無理だよ。


告白だってわかったの、資料室に入ってからだよ?業務の手伝いをして欲しいって誘われて、どうやって疑えっていうの。


「痛い……」


叩かれた頬がじんじんと熱を持つ。


このままにしてたらまた腫れるだろう。

そしたら梓ちゃんにまた心配をかけるどころか、さすがに他の社員さんにもバレてしまう。




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