本気の恋を、教えてやるよ。
苦しいんだよ。
アンタがいくら苦しくないと、平気だって言っても、俺が苦しいんだよ。
……もう、歪な筒井と稲葉の関係を見過ごすのは、嫌だ。
「……とりあえず、手当」
また氷水を作ってこよう。
そう思い稲葉に背を向けると、慌てた声がかかる。
「あ、大丈夫だよ……!駒澤くんは仕事に戻って!」
ここには偶然寄っただけでしょう?と言う稲葉。
確かにその通り。用があってこのフロアを歩いていた時に電話がかかってきて、それに出るために手近な休憩室に入ったら、稲葉が居ただけだ。
でも俺は、そんな自分のタイミングの良さに感謝してる。
「その顔で席戻るつもり?」
振り向いて見下ろせば、稲葉がぐっと答えに詰まる。
「じ、自分で手当するから……」
「誰かに見られたら、指摘されるよ」
こんな言い合いをしてるうちにも頬の腫れが酷くなりそうで、俺は早々に会話を切り上げた。