本気の恋を、教えてやるよ。
「稲葉さん優しいから、変なことに巻き込まれてないといいけど……」
その言葉には思わず苦笑してしまった。
やっぱり、他から見てもちょっと危うげなところがあるのだろう。
「困ってるようだったら助けます」
何ともなしにそう告げればその人は目を丸くして、「やだ!イケメンね」と騒ぎ出したので、さすがにキザだったかもしれないと恥ずかしくなってきてしまう。
「……そんなんじゃないですよ。じゃあ、すみません俺はこれで」
誤魔化すように笑い、俺は給湯室を抜け出した。
稲葉の元へ戻ると、言いつけ通り稲葉は大人しく待っていたようだ。
ちょこん、とソファに姿勢よく座る姿が可愛くて、思わず口元が緩みそうになる。
「待たせた」
稲葉のそばに膝を立てて屈み、柔らかい髪の毛を耳にかけて患部を見ようとすると、稲葉は目を丸くした。
「駒澤くん!?」
「じっとしてろ。切れたりしてないか一応確認するだけだから」