本気の恋を、教えてやるよ。
はあ。ため息をついた俺に稲葉が目を丸くした後で、そういえば、と声を掛けてきた。
「先週もこんなこと、あったよね」
「ああ……」
その時もアンタは顔腫らしてたよな。
思わず稲葉に触れていない方の手を強く握る。
自分の無力さに腹が立ってしょうがない。
傷ついていく稲葉をもう見たくないのに、それを阻止する術を俺は持ち合わせていないから。
本当はこんな、傷つけられてしまう前に助けたいのに、それが出来なくてもどかしい。
「最近、駒澤くんに迷惑ばっかりかけちゃってるなあ……」
ごめんね、と苦笑いを浮かべた稲葉。
「……もっとかけろよ」
「え?」
「迷惑なんて思ったことないから。もっと頼って」
俺を一番に、頼って欲しい。
稲葉にならどれだけ迷惑をかけられても、構わないから。
稲葉は俺の言葉に驚いているようだったが、すぐに花が綻ぶように微笑んだ。