諷喩は僅か
新 月



無駄に色っぽい照明、
女が好きそうな装飾、
何もかもあるように見える虚しい一室。

無駄に広い、ベッドの上。



「ねえ、もう冬も終わるかな」



雪が降っていた。
うっすら積もる程度のそれに、
期待はしていない。


なんにもない天井を見上げ、
当たり障りのない会話を紡いでは

こちらの気持ちなんて分かるはずもなく、
気づいたら無防備に眠る。




冬が終わったら、春が来る。
言わずとも別れは、訪れる。




1年半

お前が要したふたりの時間に

意味を探しても
理由を探しても


最後に行き着く正解は

“ 俺じゃない ”

それだけだった




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