諷喩は僅か
「あーあ、なにこれ。まだこっち一回も触ってないのにな」
「くす、のき、」
「車も出して、同じホテルに何度も通って?そんなんで何人もの相手できるほど、俺も暇じゃねえんだわ」
「―――ぁ、ん、」
「ついでに言うなら、相性も悪くねえんだよな」
「っ、ゃ、」
「ああ、それはこっちもよくわかってるみたいだけど」
下着の隙間から入り込んできた指が、中に入り込んでぐちゃぐちゃとかき回す。次第に思考が回らなくなって恥ずかしげもなく声を漏らす自分にすら、恥じなくなっていく。
でも、ずっと、飛んでいきそうな意識の中で、さっきの言葉が繰り返されている。聞き逃さなくてよかったと、心の底で感じながら、その言葉の続きを聞きたいのに、彼は私の視界を自分の脱いだパーカーで遮って表情すら見せてくれなかった。
「―――…っ!」
執拗に攻める指と、上の頂を弄ぶ唇にあっけなく敗北して、びくびくと太ももを震わせる。荒い息を必死に落ち着かせようと、飛びかけた意識を戻すことに集中していたわたしに容赦なく彼のそれはあてがわれる。
「ま、まって、」
「だから、待たねえって」
「くすの―――ッああ、!」
「……、もう、余裕のかけらもねえって?如月、俺に苛められてるお前が一番かわいいよ」