諷喩は僅か
「―――はい、もうあとは自分で飲んで。これ以上気絶させるわけにもいかねえんだから、俺を煽るのはやめろ」
「自己中性欲おばけ」
「好きに呼んでくれ」
身体を無防備にシーツに沈ませて、今度は睡魔に襲われる。
眠たそうに目を擦る楠を見つけては、なんだか無防備だなあと思ってくすりと笑みをこぼした。
「なんで笑ってんの、おまえ」
「なんか、眠たそうでかわいいなあって」
「……舐めてんのか、まじで」
「わーごめんなさい!もう体力ないです!」
「俺もそんな気畜じゃねえよバカ」
わたしの奥にある照明のスイッチを押して、部屋が暗くなる。
隣に戻ってきたのを確認して、天井をぼうっと見つめている楠の横顔を見つめていた。
「―――くすのき」
「なに」
「楠、朔月」
「……だから、なに」
「朔月って、いい名前だなあって、実はずっと思ってた」
「………なんだその打ち明け話」
彼の名前を、口にしてみる。あの人から聞いていた彼の名前は、漢字にするともっと格好良くて、この人にぴったりだと思ったんだ。
さつき、
もう一度、暗闇で彼の名前を呼ぶ。
シーツの擦れる音がして、それからすぐに伸びてきた手にゆっくりと引っ張られて彼の腕の中に抱き寄せられていた。