諷喩は僅か
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―――出会い方を、繋がり方を、縋り方を、間違えてしまった。
あまりにも最低な彼との1年半を、どうやって終わらせなければいけないか、それだけをずっと考えている。
日付が変わりそうになる23時45分、その車はわたしの家から少ししたコンビニの駐車場に止まる。
運転席に座っている男は、窓を開いて右肘をつき煙草の煙を外に逃がす。
視力が悪いからと、たまにつけている黒縁のメガネはお世辞じゃなくても似合っていた。
いつも黒い服を着ている彼は、本当にどこからどう見ても“悪い男”と呼ぶのに相応しかった。
窓ガラスを二度ノックする。ちらりとこちらを見上げた男は目線をもう一度煙草に戻して扉の鍵を開ける。
助手席の扉を開けた私は、黙ったままそこに乗り込んで扉を閉めた。
「……おはよう」
「はよ」
夜なのにおはようを使うのは、私とこの男のルールだった。
おはようを使うのに時間は関係ない、その日初めて会話を交わすならおはようを使ってもいいらしい。以前どこかで仕入れた知識を伝えてから、ふたりの中で暗黙のルールが生まれた。
相変わらず隣の男の横顔は格好良かった。煙草の煙は嫌いだけれど、彼が煙草を持つ手の甲が好きだった。
わたしの視線に気づいた彼は目を細めて私を見る。呆れたような表情をして、無言の「見てんじゃねえよ」を私に送った。