李月くんのお気に入り
30分くらいだろうか
傘も買わず雨の中歩き続けてしまった。
こうやって雨の中歩くなんて事は体調面を気にしなければならない芸能界に入ってからあまりできていなかったがやっぱり気持ちがいい。
そんな事を考えながら通りがかった河川敷。
そこに俺は何か異質な物体を見つけた。
「…人か?」
生きてるか死んでるかなんてどうでもいい。
俺は好奇心のままにその物体に近づいた。
暗い上に雨でずぶ濡れなので顔はよく見えないが、綺麗な薄紫色の髪をした女だった。
どうやらその女は生きてるようで、小さな体を小刻みに震えさせている。
こんな雨の中傘も差さずなにをしているんだ。
…俺も人のことは言えないが。
横たわっている女を軽く抱き上げ顔にかかっていた髪を避ける。
女はほんの少しの意識で俺の方を見上げて笑った。
「……あれお前、今日暴力沙汰起こした女じゃねぇか。」
消えそうな瞳から見えた黄色い瞳が確信をつく。
人並み外れた綺麗な容姿をしていたので顔は鮮明に覚えていたのだ。
持って帰るなんて面倒なことはしたくないので病院にでも放り込んで帰ろうと思っていたがまさかあの女とまた再会するとは思うまい。
俺は女を家に持ち帰ってみることにした。