角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

「で、でも、どうして分かったんですか?」

「ん?」

「だって私、名前とか……」


言ってないし、先輩は寝てたから顔だって見てないはずなのに。


「ああ、それは。匂い」

「……え?」


私ってそんなに匂ってる……?

慌てて、くんくん嗅いでみるが臭いっていうよりかは──


「お菓子みたいな、甘い匂いがきみからしてたから」


と、先輩が言った。


「え、あっ……」


そういえば、さっきつばきちゃんにも言われたっけ。甘い匂いが朝からしてたって。


「この前寝てたけど、なんとなく甘い匂いがしたのだけは覚えてて。さっきもすれ違ったとき甘い匂いしたから」


匂いで探し出すなんて、まるで犬みたい。


「よ、よく、分かりましたね……」


なんだかそれが恥ずかしくて、少し俯くと、ザッ、ザッ、と芝生を踏む音がして、私の視界端っこにつま先が入り込み。
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