角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。
うっ。考えたら悲しくなってきちゃった。
「でも、瑠衣……」
「ごめんっ、つばきちゃん、日向くん。私、ちょっと用事思い出したから行くね……!」
つばきちゃんの声を遮って、立ち上がると、私は2人の返事も待たずに教室を飛び出した。
あのままいたら私、教室で泣いちゃうかもしれないと思ったから。
トボトボとあてもなく歩いていると、
「瑠衣?」
前方から声がする。
この声は……
顔をあげる前に、誰だか分かった。
「……せん、ぱい」
今日もかっこよくて、胸がどきっと鳴る。
「瑠衣、こんなところで会うなんて珍しいな。今からどこか行くとこだったか?」
誰が通ってもおかしくない、廊下の真ん中で先輩は私に平然と声をかける。
「ちょっと、外の空気を吸いに……」
会いたかった。
でも、今は少しだけ会いたくなかった。
「ふーん、そっか。じゃあ俺も行こ」
先輩は、来た道を引き返すように私と同じ方向へ歩き出す。