角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

数学準備室にノートを持って行った帰り道、私は用事があると嘘をついて、つばきちゃんのそばを離れた。


「ふぇ……っ」


ひとりになったことで、気が緩んだ私は、涙が溢れてくる。


中庭で仲睦まじく楽しそうにいる先輩と女の子の光景が、頭の中に蘇る。


それだけで胸は苦しくなった。


「なんで、私……っ」


気づくのが遅くなっちゃったんだろう。


どうしてもっと早くに好きだと気づかなかったのかな。


あと少し早ければなにか違った?

先輩との未来があったのかな?


「……せんぱい……っ」


その場にうずくまって、泣いた。


この感情を止めることができなかった。


とめどなく溢れる涙は、止まることを知らない。


「……せん、ぱい……っ」


この気持ちは、きっと恋。

この気持ちは、恋愛としての好き。


はじめての恋。

大切にしたいと思った。


いつか先輩にも伝えたいって思った。


だけど、それも叶えることができなくて。


初恋は、散ってしまった。


それがすごく悲しくて、辛くて……


しばらく涙は、止まることはなかった──。
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