角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。
*第一章*
眠り姫ならぬ、眠り王子
中庭に咲いていた桜も、今はすっかり新緑の葉っぱに早変わり。
5月に入ると、少しずつ暑さが日に日に増して行く今日この頃。
日直の仕事を終えた私、楠木瑠衣(くすのきるい)。今年高校に入学したばかりのピカピカの1年生。
帰り支度を済ませて昇降口に向かう途中、廊下の窓から中庭に倒れている人影が見えた。
「……どうしたんだろう」
全然動かないけど、体調悪いのかな……。でも体調悪かったらあんなところで寝たりしないよね。
「あっ……男の子だ」
私、男の子としゃべるの緊張しちゃうんだよね……。どうしよう、先生呼んでこようかな。
でも、職員室に行ってる間になにかあったら大変だよね……
窓の外が気になって仕方がない。
「……が、がんばれ私……!」
心配になり急いで昇降口でローファーに履き替えると、中庭へ向かった。
「あ、あの大丈夫ですか?」
恐る恐る声をかけてみるけど、全然ビクともしない。