角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

「瑠衣のこと、部屋に連れて行っていいの?」


頬を包み込まれて、真っ直ぐ見つめられる。


あっ、これはキスされる……。

ぎゅっと私は、目を閉じた。


「い、ひゃい……」


予想していたものは、やってこなくて代わりに頬をムニっと引っ張られる。


「期待してたとこ悪いけど、浴衣濡れてるから寒いだろ。風呂入っておいで」


口角を上げて、にやりと笑う先輩。


期待なんて……!!

してない、のに……っ

私、先輩にからかわれた……


「着替えあとで出しておくから、まずは風呂入って温まっておいで」


へ、それじゃあ先輩が風邪引いちゃうんじゃ……。


「いえっ、先輩からお風呂どうぞ……! 私はあとからでも全然、大丈夫、ですので……」

「それじゃあ瑠衣が風邪引くだろ」

「で、でもっ、そしたら先輩だって……」


家主である先輩よりも先にお風呂をお借りするなんて、そんなのできっこないよ。


「俺は男だから大丈夫。早く風呂入っておいで」

「で、でも……」


タクシー乗り場まで先輩は、私のことを濡れないように雨に打たれていたから私よりびしょ濡れ。

絶対このままだと風邪引いちゃう……。
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