角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

かばんの中からお菓子の入った袋を取り出すと、頭元にそうっと置いた。


「これ、起きたら食べてください」


触り心地良さそうな黒髪が風に揺れて、毛穴なんかひとつもない綺麗な肌。髪の隙間から覗くピアスはキラリと光る。

制服は少し着崩しているけど、すごく上品な感じで。


見たことないけど……かっこいい。

……あっ、でも刺繍の色が違うから先輩だ。


「じゃあ私、帰りますね」


起こさないように小声で言うと、立ち上がってその場を離れる。


男の子とあんな距離で、一方的にしゃべりかけるなんてはじめてのことで。


すごくどきどきした、5月の始め。

こらから起こる出来事なんて想像もしていなかった──。
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