角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

「いいのよ、べつに。瑠衣を責めているわけじゃないわ」


マドレーヌを食べ終えたお皿をキッチンまで運んだお母さんは、私の頭を優しく撫でる。


「瑠衣が今楽しく過ごせてたらそれでお母さん十分よ」


お母さんの手は、いつも優しい……。

子どもの頃から大好きだった、この優しい温もりのある手。


「それに瑠衣が作るお菓子すごくおいしいから、お母さん幸せだわ」


世界一優しいお母さんは、私を甘やかしてくれる。


「お母さん……」


私もお母さんみたいにもっと優しい人になりたいなぁ。

そして、いつかこんなふうに誰かを幸せにしてあげられる存在になりたい。


そんなふうに思った、20時30分。

キッチンには、甘い甘いマドレーヌの匂いで充満していた。
< 66 / 280 >

この作品をシェア

pagetop