角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。
「いいのよ、べつに。瑠衣を責めているわけじゃないわ」
マドレーヌを食べ終えたお皿をキッチンまで運んだお母さんは、私の頭を優しく撫でる。
「瑠衣が今楽しく過ごせてたらそれでお母さん十分よ」
お母さんの手は、いつも優しい……。
子どもの頃から大好きだった、この優しい温もりのある手。
「それに瑠衣が作るお菓子すごくおいしいから、お母さん幸せだわ」
世界一優しいお母さんは、私を甘やかしてくれる。
「お母さん……」
私もお母さんみたいにもっと優しい人になりたいなぁ。
そして、いつかこんなふうに誰かを幸せにしてあげられる存在になりたい。
そんなふうに思った、20時30分。
キッチンには、甘い甘いマドレーヌの匂いで充満していた。