角砂糖より甘い先輩の溺愛は、今日も止まらない。

「今、なにか言いかけて……」

「ほんっとになんでもないから気にしないで!」


強く念を押されるから、その勢いに負けて「…う、うん」頷いてしまう。


なんだかこんなこと、少し前にもあったような……。


「じゃあこれ、ほんとありがとう! 食べたら感想言うね!」


嬉しそうにお菓子を掲げながら手を振って、パタパタと廊下を走って行く日向くん。


「瑠衣おかえり! 先輩どーだった? 喜んでくれた?」


教室に帰ると、つばきちゃんが話しかけてくる。


「……渡せなかったの」

「え? どういうこと」


言っても、大丈夫…かな……。


「非常階段に行ってみたんだけど、先輩いなくて……それで教室に行ってみたの。そしたら、女の子に囲まれてて……」


さっきの光景を思い出すと、胸がぎゅっと痛む。


「女の子に?」

「うん……」


でも、どうして私はこんなに苦しいんだろう……。

先輩のファンとかじゃないのにな。


「じゃあ、お菓子は?」
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