初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
「やっぱり、この前の口論が原因?」
「あー、うん。まぁ、大丈夫」
「香苗は何があってもなかなか話してくれないから。心配だわ」
「ありがとね。それより、次の講義大丈夫?あの教授厳しいんでしょ?」
「あ! もう行くわ! また後でね!」
「はーい」
友人と別れ、私はレポートに必要な本を借りる為に図書館へ向かおうと廊下を進む。
すると、窓の向こう。一階の中庭を歩く彼氏の姿が見えて思わず立ち止まる。
相変わらず連絡をしてものらりくらりと避けられ、帰っても来ない。
今なら捕まえられるかもと図書館に進もうとしていた身を翻す。
しかし、走り出そうとした脚はピタリと止まってしまった。
何故こんなことになってしまったのかきちんと話し合いたい。
だけど、もし別れたいと言われてしまったら?
そう、私はまだ、彼のことを……。
「馬鹿みたい……」
いつの間にか、彼は中庭から居なくなっていた。
私は止まっていた脚を動かし、ゆっくりと図書館へと向かう。
***