初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
初夏の陽の光を避けるように、窓際を避けたどり着いた奥まった四人掛けの席に座り、本とノートを広げる。
しかし、なかなか集中出来ずにスマホを開く。相変わらずの彼からの通知はなし。
大きなため息を付くと、私の身体を大きな影が覆った。
そして、ふわりと少し前に嗅いだことのある、香水の良い香りがした。
視線を持ち上げると、そこには私のことを聞き回っていると話題に出た新田さんが突っ立っていて、思わず悲鳴をあげそうになる。
こちらをじぃっと見下ろし、数日前に見せた軽薄な笑みを浮かべることなく、ゆっくりとした動作で目の前の空席に座った。
今日も相変わらずキレイな顔をしていた。
「よぉ」
「……あの、なんでしょう」
新田さんは真顔で私の顔を見つめ、テーブルに両肘をつき、顔を支えながら口を開いた。
何を言われるんだろう。
ここは図書館内、声のボリュームを落としつつ、私は警戒して椅子ごと下がる。