初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜
私、加山香苗(かやまかなえ)はクソみたいな田舎を出たかった。
冬は異常なほどの積雪量、積もれば軽く二十センチ超え。雪かき必須で交通機能は当然麻痺する。
夏は良いかと聞かれれば、確かに避暑地と呼ばれても、緑や田畑の多さで虫も多く、普通に暑い。
コンビニやドラッグストアは腐るほどあるのに、遊べる場所は電車で二駅ほど行った先にある寂れたイオンくらい。
そんなクソ田舎から都内の大学進学と同時に上京したのが一年前。
一年目の春、希望と喜びに溢れながら、駅から少し遠いけど家賃が格安なこのアパートに入居した日をよく覚えている。とにかく幸せだったから。
そして、同じゼミで気の合った彼と付き合い出し、間もなく彼がうちに転がり込んできて同棲を開始した。