初恋酩酊〜恋を知らない彼に溺れる〜




「結局、恋したところで傷付いてるじゃん。これが良いもの? 説得力ねーな」
「……別に、新田さんに納得してもらおうとしてないので」



 私の答えにあからさまに新田さんはムッとした表情をする。
 浮気を伝えてきた時点でダメージは充分なんだから、もう放っておいてほしい。


 本当は頭の中がぐちゃぐちゃで、彼との優しい思い出が何度も反芻して、なんで、どうしてと叫び出したいくらいなのに。



「はぁ……んで? その浮気男とは別れるんだろ?」
「……いえ」
「は?」
「きちんと話してから決めます。浮気をしたとしたら理由が知りたいので」
「オマエ、悲しくねーの? つーか、普通にムカつくだろ。浮気されて」
「いや、セフレと遊んでる新田さんに言われたくないです」



 私は机の上の本やらノートやらを鞄にしまいながら視線を合わせずに言葉を放つ。
 新田さんのセフレ兼彼女さん達はそりゃもうムカついてきたと思う。だから貴方は報いを受ける側だ。
 私の恋愛に口を出す権利なんてこれっぽっちもない。



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